クルフィーの色~インド.料理.旅など~

ひたすらインドとヒンディー語について綴られるブログです

インドのお香とは一体?ナグチャンパの香りの原料を解説

インドの香りには、白檀など日本語でも馴染みのあるものから現地特有の物まで様々に渡ります。インドは香料の原産地として、高級な原料の宝庫です。先ほど挙げた白檀も、サンダルウッドオイルとして精油が流通していますが、インド産のものは特に高価です。

インドではお香がよく焚かれます。お香は単に香りを楽しむ意味もありますが、空間を清めるために使うこともあります。スピリチュアルな意味合いによれば、お香や香りのする樹脂を焚くと、空間のエネルギーを高める効果があるそうです。さらには屋内に居ながら、その場を自然の中にいるかのように変える力があるとも言われています。瞑想、虫除け、宗教的慣例など、お香を使うシーンは様々です。

インドのお香の中でも有名なのは、ナグチャンパと呼ばれる製品です。

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ナグチャンパの中にも香りの種類がたくさんありますが、青いパッケージのものが恐らく最もポピュラーなものになります。

ナグチャンパについてはウィキペディアに記事がありますので、そちらを主に参考にして記していきます。

Nag champa - Wikipedia

【ナグチャンパの香りの原料】

ナグチャンパの主な原料はサンダルウッド(白檀)とチャンパク(金香木)、またはプルメリアの花(frangipani, Plumeria rubra, champa)です。

上記の中でもチャンパクと呼ばれるものが主原料として利用されます。(金香木、champak, sonchampa, Magnolia champaca, Michelia champaca)

 

今回の記事を書くに至ったのは、私がナグチャンパの原料になる植物について、ややこしいと思っていたのが発端です。上にカッコ書きで様々な呼び名を学術名、ヒンディー語名、英語でも記していますが、ナグチャンパ(ヒンディー語の発音でナーグチャンパー)の「チャンパ(champa)」という文字列が異様に多いと思いませんか?チャンパーと付く名前だけ見ると、類似の原料を使っているのかもしれないと想像されるかもしれません。しかし、同じチャンパーの中でも、全くと言ってよいほど共通性がありません。

まず、インドにはナーグチャンパーと呼ばれる植物があります。Mesua ferrea, 別名をセイロン・アイロンウッドやコブラサフランと呼ばれています。ナーグチャンパーはナーグ・ケーサルとも呼ばれ、直訳するとコブラサフランです。テリハボク科のセイロンテツボクという植物に当たります。Mesua ferrea - Wikipedia

しかし、お香のナグチャンパはあくまで商品名。どうやら実際はお香の原料として、同名の植物であるナーグチャンパーは入っていないようなのです。

先にお伝えした通り、お香であるナグチャンパの主原料はチャンパク(金香木)です。チャンパクはマグノリアモクレン木蓮)の仲間になります。Magnolia champaca - Wikipedia

一方、プルメリアはよくリゾート地のイメージに出てくるような白い花びらに中心が黄色くなっている花です。ナグチャンパに使われるのはPlumeria rubra というピンクのプルメリアです。プルメリア - Wikipedia

このプルメリアはラール・チャンパーと呼ばれ、赤いチャンパーと訳すことができます。しかし、植物のナーグチャンパー(コブラチャンパー)はテリハボクの仲間ということでしたね。

(さらにプルメリアは、インドの一部の都市で話されるボージュプリー語ではチャンパーという名称でウィキペディアには載っています。ネパール語を見ると、またまた別の植物を示すヒンディー語と同じく、カナク・チャンパーという名前です。そして、サンスクリット語ではチャンパカなのですが、表記的にはヒンディー語の発音で読むとチャンパクになります。チャンパクはヒンディー語で、ナグチャンパの主原料であるモクレンの仲間ですよね。)

そして、ナグチャンパに主に使われるチャンパクには別名があります。こちら、ヒンディー語でソーン・チャンパー(イエローまたはゴールデン・チャンパー)といいます。

これらの植物の種類がそれぞれ全く異なることから、果たしてどのチャンパやらチャンパーなのか。そもそも「チャンパー」とは一体何を示す言葉なのかという疑問がわきますよね。実は、ヒンディー語チャンパーは、チャンパク(モクレンの仲間)のことです。

かといって、その他チャンパーと付く植物がモクレン属でないことがあるのでややこしいのです。コブラチャンパーも、赤いチャンパーも、チャンパー(モクレンの仲間)ではありません。

他にもヒンディー語で主にチャンパーと付く植物を調べましたが、それらはまったく植物の種類がバラバラでした。

ここで再度確認すると、お香のナグチャンパの主原料であるチャンパク(チャンパー)はモクレンの仲間です。ラール・チャンパー(赤いチャンパー)はプルメリアの仲間となっています。それから、お香のナグチャンパに同名の植物は使われていません。植物のナーグチャンパーは、Mesua ferrea(テリハボク科セイロンテツボク)という別の植物です。

ちなみにヒンディー語・日本語辞典でナーグチャンパーの項目を見ると、テリハボク(Calophyllum inophyllum)という植物名が記述されており、ウィキペディアに登録されている 種類である Mesua ferrea は確かにテリハボク科ですが、セイロンテツボクという種の植物であり、テリハボク種ではありません。

テリハボクという植物は、ヒンディー語でスルターン・チャンパー(sultan champa)です。

テリハボク - Wikipedia

調べれば調べるほど、何が基準となってチャンパーという名前が付く植物がこれだけあるのか定かではありません。

知人に聞いた話ですが、ナグチャンパのお香は霊感のある人には浮遊霊を追い払うのに使うほど絶対的な製品だそうです。お部屋や家全体、または心身の浄化にと、日常的に使う方は多いので、日本でもネットショップではナグチャンパセットが見られます。

私は日頃ナグチャンパ以外にも、日本のお香やセージ、パロサントなど香木も焚きますが、霊が見えるような類の霊感はないので、ただ心身が落ち着くとか、邪念が浄化されてる感じがするなという気がしています。ヨガマスターのサドゥグルもお香は人にではなく、空間に作用してエネルギーを高めると話していました。そこで、サンブラーニーという樹脂を焚くことについても話していたのですが、それの紹介はまたの機会にしましょう。

 

 

この記事でぜひ紹介したかった樹脂系のお香(フランキンセンス、ミルラ、ベンゾインなど)に、香木もあったのですが…

インドではないですが、パロサントにホワイトセージも焚くとモクモク煙が出て家全体そして自分自身の浄化によいです。