ネパール語とヒンディー語の違い、片方の言語で相手にどこまで通じる?
ネパール語とヒンディー語って似ているけれど何が違う?
インドの公用語であるヒンディー語はデーヴァナーガリー文字で綴られます。すぐそばに位置するネパールにはネパール語が使われています。筆記体も一見すると、ヒンディー語と同じデーヴァナーガリー文字です。でも、ネパール語はヒンディー語話者に、ヒンディー語はネパール語話者に通じるのでしょうか。具体的にはこの二つの言語で何が違うのか調べてみました。
ネパール語とヒンディー語で使われる文字はほぼ同じですが、少し使い方に違いがあります
実際にヒンディー語、ネパール語に使われる文字は同じデーヴァナーガリー文字です。しかし、2つの言語を比べてみると少しつづり方に違いがあります。これは文字の読み方の違いも関係しています。
ネパール語の方が少しサンスクリット語に近い読み方、書き方をする
ネパール語とヒンディー語を比べたときに、若干ネパール語の方がサンスクリット語に近い印象を受けます。単語によっては綴りや書き方もサンスクリットと似ています。サンスクリットは南アジアで使用された古い言語で、いわゆる古文です。
単語は共通しているものと全く違うものがあります
日常会話で使われる単語はヒンディー語、ネパール語ともに共通しているものがあります。綴りも同じか似ていることが多いので、どちらかの言語ができれば理解できるでしょう。しかし、少し両方の言語を学べば全く違う言語だということにいずれ気づきます。
同じデーヴァナーガリー文字ですが、発音が異なります
どちらの国でも同じデーヴァナーガリー文字で共通しているのですが、よく聞くと多くの文字で発音が違っています。例えば、家を指す言葉は ghar (घर) ですが、綴りが同じでもヒンディー語は呼気多めのガル、ネパール語はカールに近いです。Ghの音はヒンディー語からすると、ネパール語の方が呼気が多すぎて濁点がないような発音です。ヒンディー語のチャ(छ)の音はネパール語ではサの音に近いなど、全く同じ発音ではありません。
他にも神という単語は ishwar ईश्वर ですが、ネパール語はイースワルと発音し、ヒンディー語の方がイーシュワルに近いです。これはネパール語でサ行を表す言葉でも、ヒンディー語ではシャ行なのです。ヒンディー語で野菜のカブはシャルガム(シャルジャム)、ネパール語はサルガムという感じです。
このことから、書き言葉が両言語で同じでも、発音の違いを全く知らないと、会話する時にどの単語なのか見当がつかないと思います。
イントネーションの違い
両方の言語を比べると、イントネーションが違うなと感じます。ヒンディー語のイントネーションや強弱と、ネパール語での話され方は両言語で同じ単語でも違います。
例えば、どちらの言語でも挨拶はナマステーですが、イントネーションが異なります。ネパール語はマにアクセントがあり、ヒンディー語の場合はテが強調されるか、単語全体のアクセントが平坦です。
「〜でない」など否定を表す単語がネパール語には多い
ネパール語は否定を表す単語が多いです。ヒンディー語ならナヒーン、ナ、のどちらかで表すところを、ネパール語ではそれぞれ別の単語があります。主語や代名詞によって否定を表す単語が変化します。
なんとなくならヒンディー語とネパール語は通じる
それぞれの言語の違いが掴めたら、似ている言葉から文脈を知ることはできます。
数字は似ている
数字の読み方がどちらの言語も似ています。そのため、自己紹介で年齢を伝える時など、数字を伴っていれば話し手の見た目と文章の雰囲気で、伝わるかもしれません。
文法も似ている
ヒンディー語もネパール語も文法が似ています。基本的な文法は日本語と同じ順序です。少し英語のような構文もあります。
また、各単語による表現の仕方も両言語で似ています。
ネパール語とヒンディー語の比較を例文で見てみましょう
「私の名前は(kurfi)です。」(kurfi は筆者のペンネームです)
- ネパール語: मेरो नाम (कुर्फ़ी) हो। メーロー(私の) ナーム(名前) クルフィー ホー(です)
- ヒンディー語: मेरा नाम (कुर्फ़ी) है। メーラー(私の) ナーム(名前) クルフィー ハェ(です)
「これはペンです」
「君は?」英語のAnd you?
「元気ですか?」
- ネパール語: तपाईं (तपाईंलाई)कस्तो हुनुहुन्छ ? タパーイーン(あなた) カストー(どう; how) フヌフンサ(です)?
- ヒンディー語: आप कैसे हैं? アープ(あなた) ケェーセー(どう; how) ハェン(です)?
会話の中に互いの言語間で共通した単語が全くないと通じなくなる
二つの言語を比べてみると、両言語で似ている単語や言い回しは多いです。その一方で、全く共通点のない単語も多いので、ネイティブのヒンディー語話者とネパール語話者の間でも意思の疎通は難しいです。互いに理解するためには言葉以外にも、状況、文脈、話し手の雰囲気などを掴むことになります。つまり、コミュニケーション能力が必要です。それらを駆使すれば、なんとか相手の言わんとしていることは伝わるであろう、という程度にネパール語とヒンディー語は似ています。
ネパール語とヒンディー語を詳しく学ぶなら、初めは語学書を読むのがおすすめ