クルフィーの色~インド.料理.旅など~

ひたすらインドとヒンディー語について綴られるブログです

誘惑と好き避け【ada/adaen】ボリウッド頻出単語より

【ada/adaen】アダー・アダーエーンという単語についてメモです。
ボリウッドの頻出単語より【अदा, ada(単数)/अदाएं, adaen(複数)】という単語について掘り下げた覚書になります。
ボリウッド頻出単語は別の記事で不定期に更新してまとめていますが、その中でも詳しく掘り下げておきたいのがこの単語です。
つい先日の Hey Shona の訳にもでてきたのですが、私はひとまず「そういうのよせよ」と訳しました。
元の歌詞には「やめろ/離せ このアダーも」となっています。


日本のヒンディー語辞典で意味を調べると、アダーは
⒈ 雰囲気;趣き
⒉ 愛嬌
⒊ 物腰
⒋ 色気;色っぽさ
となっています。


インドのヒンディー語によるヒンディー語辞典では
⒈ 立ち振る舞い;女性の科、色っぽい様子
⒉ スタイル(歩き方、話し方などの方法)
⒊ 魅力的に見せようとすること(魅惑すること)
⒋ 特に若い女性において心を虜にする人
⒌ 愛らしく艶かしい身のこなし
上記が主な意味となっています。


日本語で書かれた辞典だけを見ると中性的な物事についての意味合いがあるようにも見えるのですが、ヒンディー語の辞典で調べると、物や事象あるいは男性ではなく、女性の身のこなしについて使われる単語であることがわかりますね。
英語で調べてもアダーには「flirt」という恋愛で異性をよく引っ掛けようとしている意味合いの単語がでてきます。
辞書からアダーの意味を捉えようとすると、女性の自然な立ち振る舞いが色っぽいか、あるいは女性が男性を誘惑しようとそういう行動を狙ってしているとの、どちらの意味でも通じます。


私は別のボリウッド頻出単語のまとめ記事でアダーについては「仕草」と簡単に記しています。
仕草なら客観的で、本人が意図していてもそうでなくても、単純に人の動作として意味を捉えられるからです。


ボリウッドの音楽はつまり、映画の挿入歌にあたりますが、映画のシーンを歌で表現しています。
アダーという単語が映画の挿入歌で指すのは、だいたい男性目線から見た女性の振る舞いについてです。
ただ、それがどのような男女関係であるかは歌を聴くだけではわかりません。映画本編を見る必要があります。
もし主役男性がヒロインに一目惚れするならば、盲目の状態で彼の目にはヒロインが小悪魔的に映っているかもしれませんし、あるいはとても純粋で清らかな女性に見えていて、彼女の何気ない仕草に胸がいちいちときめいているのかもしれません。
しかし、ヒロインは全ての振る舞いを無意識にやっているのか、それとも男性の目を意識してやっているのかについては、男性からはわかりませんね。
彼が勝手に恋に燃え上がって、彼女が意味ありげな素振りをしていると、俺に気があるなどの勘違いをしている可能性があります。
Hey shonaの歌詞でも、サイフ・アリー・カーンが勝手にラニー・ムケルジーの姿とか仕草とか見て「そうやって俺を惑わすのはもうやめろよ〜」と言っている可能性もありますし
彼女が実は映画の中で非常に純粋な役柄で、そんなつもりはなかったけれど結果的に一挙一動が彼を誘っていたのかもしれません。
または、彼を落とすつもりで小悪魔な誘惑をわざとしていたのかもしれません。


アダーは状況によっては彼女が「その気がない振り」をしていたと訳すこともできます。
いわゆる好き避けとか、ツンデレみたいな状態です。辞書の意味を大きく解釈してボリウッドに当てはめると、女性の男性から「逃げる振り」が「本当は追いかけて欲しい」というような振る舞いとなり、誘惑していると捉えても良いと思います。
Hey Shona で言うなら「もうその気がないとか、逃げる振りはやめろよ(追いかけて欲しいくせに)」と、男性側は思っている訳になります。(そして、本当のことを白状すればいいだろうという歌の流れになります。)
ボリウッドあるあるの記事に書いたかは不明ですが、よくあるシーンの定番が「女性が逃げる、男性が追いかける」光景です。
男性が猛アタックするが、女性は恥じらいながらわざと逃げるのです。結局、追いかけられるためということになります。私はあなたを好きじゃないから、という動きをして、たいていは困惑しつつもときめいています。
そしてそれが男性側には嬉しいようで、至福の笑みを浮かべて彼女の後ろ姿を見つめています。
「しょうがないな〜困った子だな〜」みたいな、それはもう優位に立って彼女の心を既に鷲掴みにしたかのように、そして彼女の虜になってしまっているシーンを映しています。


結局、女性のアダーやアダーエーンというのは、相手役の男性から見てどう感じているかで日本語訳は大きく変わると私は思っています。
インド映画の男女のシーンをより楽しむために、アダーとアダーエーンという単語について覚書でした。


Om Shanti Omの挿入歌 Main Agar Kahoon にもアダーエーンという単語が出てきますね。
「君の顔からアダーエーンが露わになってしまっている」と。
アダーエーンはボリウッドで重要単語ですね。