クルフィーの色~インド.料理.旅など~

ひたすらインドとヒンディー語について綴られるブログです

インドのBOP

とても嬉しい出来事がありました。私の書いた卒業論文が佳作に選ばれたのです。随分調べて書き上げたものだったので、認められてとても嬉しいです。入賞する上位10名ほどの中に絶対入りたいと思っていました。
私の卒論のテーマはインドのBOPに関するものでした。BOPとはBase of the Pyramidの略で、貧困層をターゲットにした新たなビジネスモデルであると同時に貧困撲滅や生活向上への持続可能な枠組みです。例えば、ユニリーバのインド子会社では安価な石けんなどの衛生用品を貧困層に向けて売っています。貧困層の人は石けんで手を洗うことの重要性を理解していません。そのために下痢を発症したりします。石けんの普及にあたり課題となるのが、宣伝方法です。テレビを持っていない人、文字が読めない人にも伝わる方法でなくてはなりません。そこでユニリーバでは学校訪問を行い子ども達に石けんについての授業を行います。その内容は子どもから親へ口コミで広がります。今まで石けんの需要がなかった地域に需要を生み出せるようになり、衛生は向上し販売による利益も得ることができるようになりました。BOPでは社会貢献と利益があり、企業と貧困層が共に成長していけるシステムなのです。
しかし「お金のない貧困層に少しの需要ができたからといって、大きな利益はあげられないだろう」と考える方もいると思います。BOPのモデルではここに成功のカギがあります。1ルピー(約2円)のシャンプーがあったとして、10個売れば10ルピー、100個なら100ルピーの売上になります。貧困層の人は日当で所得を得る場合が多く、その日を過ごす分のお金しか持っていません。1ボトルのシャンプーが100ルピーだとしたら手が出せないため1本も売れないことになります。しかし、低価格だったら手が出せるため、それによって1ルピーという額でも利益が生まれることになります。1ルピーで買える人がたくさん生まれる=消費力が増大するということです。結果的に大きな利益を生み出すことができます。
先ほどの石けんの授業がきっかけで子どもが親に口コミで広げたように、貧困層では口コミがメディアの役割となります。それを利用して作られたのが農村女性によるシャクティ・プロジェクトです。これは農村女性に商品の訪問販売の仕事を与え、商品を広めるのと同時に立場の低い女性を自立に導く内容となっています。
ブログでは卒業論文の内容を全て書くわけにいきませんが、BOPに興味がある方はBOPの概念を作ったC.K.プラハラードの翻訳本があるので是非ご覧ください。
私はBOPのモデルなら、将来貧困をなくせるのではないかと期待しています。貧困撲滅に大事なのは持続可能な社会を作り出すことだと、耳にしたことがあります。BOPビジネスでは持続可能な社会作りに大きく貢献していると思うのです。
貧困の悪循環という図式があるように、貧しさの要因は複雑に連鎖しています。雇用が無い、食料が無い、汚染された水を使う、病気で健康状態が悪いなど、それらはどれか一つでも存在すれば、貧困につながってしまいます。どこかを断ちきらなければ貧困状態は良くなりません。ユニリーバが実践しているのは雇用を生み出し資金が得られ、食べ物が買える、衛生概念が身につくという効果があるので、貧困の悪循環を断ちきれることを示していると思います。
石けんの他にも企業により低価格の冷蔵庫を販売したり、義足、目の手術を行ったり、低い立場の労働者の地位向上に努めたりと、さまざまな分野にBOPビジネスは広がっています。例として冷蔵庫について詳しくいうと、冷蔵庫があることによって生ものを腐らせることなく保存ができるので食中毒を防ぎ、健康を守って働くことができる、賃金が得られる、食料とボトル入りの綺麗な飲み水を買える→健康を守れるということです。これは貧困の悪循環を断ちきった場合でつなげた冷蔵庫の効果です。これについても複雑なので、気になる方は調べてみてください。(ちなみに私の考えでは貧困の悪循環でもっとも断ちきるべき要因は、水の部分にあると思っています。)
今はBOPという言葉を知る人は少ないかもしれませんが、貧困層と企業が共に成長していける社会が将来もっと確立されていることを私は期待しています。